
本記事の要点
・点滴チューブは樹脂製のため、温度変化による伸縮は避けられない。問題は「伸びるか」ではなく「伸びが現場でどう影響するか」。
・点滴位置のズレは、水だけでなく液肥(施肥設計・生育制御)の崩れにもつながり、株ごとの生育差や品質差を生みやすい。
・屋外は「急激な温度変化」、ハウスは「高温の持続」が主な要因で、トラブルの出方が変わる。
・熱対策は 色・厚み・素材 の3軸で考える。色は温度上昇のピークを緩和、厚みは形状保持(たるみ・蛇行)に寄与する。
・白色チューブは基本的に 外白・内黒(藻対策+吸熱抑制)。いちごではランナー焼けの抑制に寄与することがある。
・素材配合は多くが非公開のため数値比較は難しいが、挙動の違いとして現れることがある。
点滴チューブと熱の課題
点滴チューブを使った灌水では、熱による影響を避けることはできません。
これは製品の良し悪し、というよりも、素材による影響であり、どのメーカーの製品にも必ず発生する課題です。
現場で発生しているトラブル

点滴チューブは主にポリエチレン系樹脂で作られています。
樹脂である以上、温度上昇による膨張、温度低下による収縮は必ず起こります。
問題は、「熱で伸びるかどうか」ではなく、「熱による伸びで現場でどのように影響しているか」という点です。
熱によるトラブルの中で、最も頻繁に発生するのが点滴孔の位置ズレです。
これは、チューブ全体が均等に伸びるのではなく、一部だけが先に伸びることで発生します。
次のような症状が出ている場合、熱による影響が関係している可能性があります。
・畝の途中だけ点滴位置がズレる
・昼と夕方でチューブの張りが違う
・同じ施肥設計なのに株ごとに反応が違う
位置ズレが起きやすい条件とは?
①日射を強く受ける箇所と、影になる箇所が混在する。
ハウス内の支柱や被覆材の影、露地で一部だけ直射日光を受ける区間などでは、日射を受けた部分のチューブが先に温度上昇して動きやすくなります。その結果、伸びが一部に集中し、局所的に点滴位置がずれやすくなります。
②畝の途中で地面との接触条件が変わる。
マルチの有無などでチューブが土に密着している区間と、浮き気味の区間が混在すると、動きが抑えられる部分と自由に動く部分が生じます。この差が伸び方の差となり、畝の途中だけ位置ズレが発生する原因になります。
③ピン固定の間隔が不均一
ピンの間隔が揃っていないと、間隔の広い区間に伸びが集中しやすくなります。その結果、伸びの逃げ場に偏りが生じ、点滴孔の位置ズレが局所的に現れます。
熱伸びによって受ける実害
熱による伸びが発生した場合、株元から点滴位置が外れ、チューブが蛇行したり弛んだりして、一部の株だけが水量不足となる可能性があります。歪みがひどくなると、固定しているピンやコネクターから外れることもあります。
株間隔が狭いほど、わずかな位置ズレが致命的な灌水ムラに繋がります 。
影響大(間隔が狭い): 育苗(5cm〜)、イチゴ・ホウレンソウ(10cm)
影響中(間隔が広い): トマト・キュウリ(20cm)

また、点滴灌水は、多くの現場で施肥(液肥)や生育調整と一体化したシステムとして使われています。
つまり、局所的な灌水ムラは、一見すると軽微な問題に見えますが、水分だけでなく、栄養が均一に行き届かないことが原因で、
育成のばらつきや、収穫サイズの不均一、品質低下にもつながります。
2.屋外とハウス栽培での熱の影響の違い

屋外灌水における熱の特徴
屋外では
・直射日光による急激な表面温度上昇
・昼夜の温度差
・地面との接触条件のばらつき
・雨風による冷却
など、温度変化が不安定です。
このため、昼に伸び、夜に戻る、部分的にたるみが出る、といった挙動が出やすくなります。
ハウスにおける灌水の熱の特徴
ハウスでは最高温度が非常に高くなりやすく、
高温状態が長時間続く場合もあります。
そのため、チューブ内の水温も上昇しやすいという特徴もあります。
屋外ほど急激な温度変化はないものの、高温が持続するという環境が屋内では発生することになります。

3.熱対策として考えるべき3つの選定軸
チューブの色による対策
点滴灌水において、黒色チューブが主流ですが、白色チューブという選択もあります。
白色チューブの構造は基本的に「外側が白・内側が黒」です。
これは内側を黒にすることで藻の発生を防ぎ、外側を白にすることで表面温度の上昇を抑えます。
また、白色チューブはいちごの栽培などでよく使用されますが、チューブによるランナー焼けを抑制する効果もあります。
ただし、色は熱を完全に防ぐものではなく、温度上昇のスピードやピークを緩和する手段として考えられます。
また、白色チューブは熱だけでなく、光学的な観点でも一定のメリットがあります。
露地やハウス内では、水滴がチューブ表面に付着し、レンズのように光を集めることで、局所的な高温が発生することがあります。
黒色チューブでは、この集光によって表面が焦げたり、微小なピンホールが生じたりするケースが報告されています。
白色チューブは光を反射しやすいため、こうした局所的な集光による焼損リスクを抑制できる可能性があります。




厚みによる対策
この厚みとは管の厚みを指します。
厚いから伸びないのではなく、厚いことで伸びが問題になりにくいという点です。
厚みが増すことで、剛性が上がり、たるみ・蛇行が出にくく、点滴位置が安定しやすくなります。
もし熱による伸びが顕著で、作物の生育に影響が出ているのであれば、さらに厚みのあるものを試してみるのも、選択肢の一つかもしれません。
素材による対策
点滴チューブの素材配合は、多くのメーカーで詳細が公開されていません。
そのため、膨張率や配合の違いによる伸びやすさを数値で比較することは困難です。
一方で、素材情報が非公開であるからこそ、その配合や設計思想が各メーカーの特性として表れやすいとも言えます。
現行の点滴チューブで違和感や課題が続く場合、栽培環境や管理方法との相性を見直す意味で、異なるメーカーの製品を一部で試してみることも、改善につながる可能性があります。
最後に
点滴チューブの熱対策は、製品選定だけでなく、使用環境や施工条件を含めて整理することが重要です。
素材や設計思想の違いは、実際の挙動として現れることがあります。
MetzerのLINについては、熱伸縮が比較的安定しているとの評価をいただくこともありますが、実際の挙動は施工条件や環境によって異なります。実際の栽培育成条件を踏まえた選定について、個別に確認したい場合はお問い合わせください。
用語説明:点滴チューブとは
本記事でいう「点滴チューブ」は、チューブ内のフラットフィルターを通して水や液肥をポタポタと供給する灌水チューブを指します。現場では「ドリップチューブ」「灌水チューブ」「潅水チューブ」「点滴灌水」などと呼ばれることもありますが、本記事では同義として扱います。



