世界各国のパビリオンや施設が、最先端の技術とデザインを競い合う—それもまた、万博の大きな魅力のひとつです。
今回の大阪・関西万博では、さまざまな建築で色々な形状のポリカーボネートが取り入れられていました。
ポリカーボネートは、軽量でありながらガラスの数倍の耐衝撃性を持ち、優れた透光性や加工性を兼ね備えたプラスチック素材です。
中空構造のパネルから、ソリッド板、さらには3Dプリントによる成形部材まで、多彩な形で利用できるのが大きな特徴です。

アメリカ館
ベルギー館
エスカレーター

三菱未来館
休憩所
トイレ

コロンビア館

トイレ






多彩なポリカーボネート板の特徴と万博会場での採用事例
屋外でも美しく長持ちー
ポリカーボネート折板・波板

ポリカーボネート波板は、工場や倉庫、エクステリアの外壁、さらにはカーポートや通路の覆いなど、屋外環境で幅広く使用されています。
軽量で施工が容易なうえ、耐衝撃性と耐候性にも優れているため、長期間安心して利用できるのが特徴です。
波形に加工されたことで剛性が高まり、強風や雨にも強い構造となっています。
また、光を透過させつつ紫外線を遮る性能を持ち、採光性と居住性を両立できる点も評価されています。

三菱未来館
波の大きい透明の折板を使用
屋外の外壁・目隠しとしての役割
※詳しい建築については下記参照。

トイレ5・休憩所
透明な波板を使用。
日本で一番身近で見られる仕様。
三菱未来館の建築的な構造や素材選定の背景については、TECTURE MAGの記事でも詳しく紹介されています。
断熱性・採光性を両立ー
中空ポリカーボネート板
内部に空洞を持つ中空ポリカーボネート板は、外壁や屋根、ファサードといった大規模建築で広く採用されています。
軽量でありながら高い断熱性を備え、厚みによっては大判パネルとして利用でき、施工効率が良く、短期間での工事にも対応できます。
建築での活用
透明性にも優れており、日中は自然光を柔らかく取り込み、夜間には内部の光を外部に印象的に放つことで建築の表情を変化させます。
産業施設での応用
断熱性能を活かした活用例として、データセンターの空調効率化にも用いられています。サーバールームのホットアイル/コールドアイルを仕切ることで冷却効率を高め、省エネルギー化に貢献しています。


アメリカ館
両サイドに電光ディスプレイパネルが設置され、
その光を中空ポリカが鏡のように反射
※詳しい建築については下記参照。

ベルギー館
乳半色の中空板
パネルを少しずつずらして曲線表現


エスカレーター
ジョイント式により美しい平面が生まれ、
アーティストの装飾により、
5基それぞれが異なる表情を見せる。
アメリカ館の設計は、米国の建築事務所 Trahan Architects によって手がけられました。
建築コンセプトやデザインについては、Trahan Architects公式サイト(USA Pavilion for Expo 2025 Osaka)で詳しく紹介されています。
光と影をデザインするー
ポリカ平板のエンボス加工
表面に凹凸を施したエンボス加工のポリカーボネート平板は、光を拡散しながら視線をやわらかく遮る建材です。
採光とプライバシーを両立できるため、オフィスや商業施設の間仕切りや採光窓によく使われています。


コロンビア館
キュービック型に設置された、ポリカーボネートの板。
2種類のエンボスが使われ、粗さの異なる表面が光を多彩に拡散
コロンビア館の詳細な設計プロセスは、MORF Inc.の プロジェクト紹介ページでご覧いただけます。
造形の自由を拓くー
3Dプリントポリカ

3Dプリントで成形された曲面パネル
自由な造形を実現する3Dプリントポリカ
近年注目されているのが、3Dプリントで出力されたデザイン性の高いポリカーボネート部材です。
大阪・関西万博では、会場内のトイレに実際の建築部材として採用され、複雑な曲面を持つ造形が実現しています。
従来加工の課題をクリア
ポリカーボネートは耐熱性・強度に優れていますが、従来の方法では細かな曲げや複雑な形状の表現が難しいという課題がありました。
3Dプリント技術により、その制約を超えた自由な造形が可能になっています。
トイレ7に関する施工の詳細や設計チームのインタビューは、建築メディア TECTURE MAGの記事に詳しく掲載されています。
建築と暮らしをつなぐ
「ポリカーボネートの未来」
2025年大阪・関西万博では、ポリカーボネートが建築素材としての可能性を大きく広げる瞬間が随所に見られました。
ジョイント式中空パネルによる光の演出、3Dプリントによる新しい造形表現、透明な波板が外壁を軽やかに包み込む ー
そのどれもが、これまでにない柔軟性とデザイン性を体現しています。
これらの実例は、ポリカーボネートがもはや特別な素材ではなく、私たちの街づくりや日常空間に自然に溶け込み、建築を支える存在へと進化していることを物語っています。
今後は、脱炭素社会を見据えた建築や都市デザインにおいても、その軽量性・断熱性・耐久性を活かした次世代の建材として、
さらに活躍の場を広げていくことでしょう。
ポリカーボネートの強度や透光率、耐候性など、より詳しい物性データについては、
こちらの技術情報ページ からご覧いただけます。
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※本記事および掲載写真・イラストは、株式会社ケーアイエヌ(KIN Co., Ltd.)により作成・提供されています。
